すみれ


スミレ科スミレ属の多年草。菫。狭義には、学名Viola mandshuricaを指す。多くは解放花といわれる開花する花と、その後つぼみのまま閉じた花の中で自家受粉して種子を作る「閉鎖花」を持つ。

日本では、花のかたちから「墨入れ」、変じて「すみれ」となったといわれる。すみれの若菜や根茎は食用にされていた。

ヨーロッパでは聖母の花として誠実とひかえめをあらわすといわれ、花言葉は「誠実・貞節」「謙遜・ひかえめ」など。

水はけと通気性のきわめて高い土を好み、真夏・冬は半日陰で育てる。二、三年で連作障害が生じるので、花後すぐに植え替えをする。

ヒゴスミレ 細かく裂けた葉が特徴的

匂いすみれの花

ハイネは「碧い春の眼」、ワーズワースは「空にひとつ光っている星のように美しい」と詩にうたっている。

日本にはスミレが60種近く自生していて、スミレの宝庫だそうだ。万葉集巻八の「春の野にすみれ摘みに来し吾ぞ野をなつかしみ一夜宿にける」という山部赤人の歌のように、野原でひっそりと咲いている姿を見たのは大分昔のことになった。

日本の野山に咲くスミレも好きだが、これを根っこごと人工の庭に持ってくるのはかわいそう。タキイで日本スミレの苗のセットを買った。
問題は次々に株分けが必要なことで、ちょっとねずみ算的な増え方なのがこわい。

一重の西洋匂いすみれも昔から好き。花も葉もいい匂いがして、可憐な姿かたちにもひかれる。古代都市アテナイのシンボルの花で、結婚式などでこの花の冠をかぶったとか。しかしギリシャ神話にはずいぶんと妙な話がある。ヴィーナスが一群の乙女たちが踊っているのをみて、キューピットに、私とあの女の子たちとどっちがきれい、と聞いて、彼があの女の子たちのほうがきれいといったもんだから、怒ったヴィーナスが乙女たちを紫色になるまでぼこぼこに。それでキューピットが乙女たちを紫色のスミレの花にしたと。男の無責任さがきわだつ痛ーい話である。

ヨーロッパでは春の使者として愛され、春の女神の足跡から春一番のすみれが芽生えるとされる。ウィーンの宮廷では13世紀初、3月にドナウ河の川岸に春の最初のすみれを探しに行き、見つけたすみれを棒の先にさし、そのまわりで踊る習慣があった。ゲーテはいつもポケットにすみれの種をしのばせ散歩の最中に道ばたにまいて歩いたそうで、花ゲリラの元祖といえよう。