水仙

 水仙の花は本来イベリア半島を中心とした地中海沿岸を中心に北アフリカ・ヨーロッパ・西アジアに分布していた。ギリシャ神話では美しい青年ナルキッソスnarkissosが泉に写った自分の姿に恋いこがれて死に、水仙に姿を変えられたという。narke とはギリシャ語で麻痺のこと。水仙には麻酔性のあるアルカロイドのリコリンなどが含まれるので名がついたらしい。あまりロマンティックではない。シェークスピアは「冬物語」において、ペルセポネーが黄泉の王につれさられる際に落とした花がラッパ水仙になったというが、こちらの方も結局は誘拐・拉致・監禁だからなあ。
 唐の時代には、房咲のものがシルクロードを通って中国にもたらされた。唐代の名は「ないぎ」で、ナルキッサスの変形。その後に拡がった「水仙華」という名前も、水にちなんだ仙人というのがギリシャ伝説の名残らしい。

 日本にはもともと水仙はなかった。現在では越前海岸など海岸ぞいに自生地があるがこれは球根が漂着して根をおろしたとみられる。日本最古の水仙の記録は摂政九条良経(1169〜1206)の描いた色紙といわれているが、絵画などに描かれるようになるのは室町時代である。室町時代の漢和辞典『下学集』(1444)によれば、和名「雪中華」、漢名「水仙華」。梅を兄、月橘を弟とするという漢詩がひかれている。