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ヘッセの庭  
大学の一般教養の授業で、ヘッセの詩に関する講義を取ったことがある。講師は、小さなかわいいおじいさんの先生で、たんぽぽという詩の美しさを熱心に語った。あまり人気がない授業で、たまに教室の電源から過激派まがいが拡声器をつないで窓の外で講義ボイコットを呼びかけるなど無礼千万な事件があったが、詩の美しさは心に残っている。

ヘッセ『庭仕事の愉しみ』(ミヒェルス編・岡田朝雄訳 草思社 1996)は、ヘッセの詩とエッセイ、そして写真やスケッチを収めた素敵な本である。彼の都会から離れた自然の中での素朴で清廉な生活に、庭は大きな位置を占めていた。「生きている自然の一部分を想像力に従って形づくるという庭師の仕事ほど詩人の仕事に共通する仕事はほかにない」と彼は手紙に書いている。

ヘッセの庭の中でも、最も魅力的に思われるのは、彼が持った最初の庭である、ボーデン湖畔のガイエンホーフェン村の庭(1907〜1912年)である。ぶなの生け垣、ラズベリーの茂みなど多様な果樹、いちごやレタス、いんげん、赤かぶなどの菜園、わすれな草やモクセイソウで縁取ったダリア・カーネーション・赤いぜにあおいなどの色とりどりの花壇、通路の両側には数百本のヒマワリが並び、その下を赤や黄色のキンレンカが彩った。庭のかなたには湖がある(右図はヘッセの手によるもの)。力強く、色鮮やかな庭である。

「木に傾聴することを学んだ者は、もう木になりたいとは思わない。あるがままの自分自身以外のものになろうとは望まない。あるがままの自分自身、それが故郷だ。そこに幸福がある。」