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チャペックのロック・ガーデン 
Karel capek、カレル・チャペック(1890〜1938)は、チェコスロバキアの劇作家で小説家。人間性をむしばむ機械文明や全体主義の矛盾を鋭く風刺した。「ロボット」という言葉を新造したことでも有名だ。彼の『園芸家12カ月』(中公文庫、1929年頃)は傑作だと思う。

彼によれば、「 園芸熱とは血液のなかに少量の土が入り込んでおこる一種の中毒あるいは炎症 やむをやまれぬ一つの情熱 」である。その炎症にやられた園芸家の生態を愉快に描いている。でもこのおもしろさは実際に炎症にやられたことのある者にしかわからない。

チャペックは、とりわけロック・ガーデン、別名アルプス・ガーデンが自慢なようだ。これは「石庭」ではなくて、岩を組んで自然の植木鉢のようにして、粗い砂を入れて水はけを良くし、高山植物や山野草など、夏の高温多湿を嫌う植物を育てるもの。

だからギリシア神話のシクロップのような気分で、ロマンチックな山脈を辛苦辛苦して作り、出来たのは一山の岩くずのように見える、というのもありがちな話であるが、岩が高山植物などの小さくてかわいらしい花のクッションで覆われるのは、「荒涼とした地球があるやさしい愛のひとときを生み出したこの世でいちばん優美なもの」なのである。

ロック・ガーデンの植物たち。チシマザクラ、ムラサキイヌナズナ、キバナクレス、カミツレ、ヨモギ類、ラベンダー、シクラメン、サクラソウ、マガリバナ、エゾリュウキンカ、リンドウ、オランダフウロ、ダイアンサス・ムザレ、カンパニュラなどなど、これらの植物を一度も栽培したことがない者は、この世の美しさについて語る資格がないという、チャペックはたぶん正しい。

チャペックの挿絵

たとえ二坪でも三坪でも自分の土地をもち、そこに何かしら植物を植えている人間は、たしかに保守的になる。そういう人間は、数千年来の自然法則をたよりにしているからだ。しようと思うことは何でもできる。しかしどんな革命も、発芽の時期をはやめることはできないし、五月以前にライラックを咲かせることもできない。だから人間はりこうになり、法則と習慣にしたがうようになる。

十二月の庭は、何よりもまず、おびただしい園芸カタログのなかに見出される。暖房の部屋でカタログ・パンフレット・本・雑誌に首まで埋まって冬眠し、自分の庭に絶対に必要な植物が植わっていないこと、新種が370種以上あることを知り、憂鬱になり、猛然と注文書を書く。われわれ園芸家は未来に生きているのだ。バラが咲くと、来年はもっときれいに咲くだろうと考える。本物、いちばん肝心のものは、わたしたちの未来にある。