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カドフェルの薬草園  The Herb Garden in Shrewsbury  

エリス・ピーターズの修道士カドフェルシリーズは一時絶版だったが、現在光文社文庫で再版されつつある。12世紀のスティーブン王と女帝モードの内戦下のイングランドとウェールズ、シュロップシャ、シュールズベリ大修道院を舞台とした歴史ロマンに推理ものの風合いが加わり、歴史好きにはこたえられないシリーズだ。作者の死により中断してしまったが…

カドフェルは若いときに第一回十字軍に参加し、その後も船長として各地を放浪した。中年後に平安を求めてベネディクト会の修道士となってシュールズベリ大修道院に入り、その敷地の中の菜園や薬草園の面倒を見ることに満足を見出し、薬を調製し医師の役目も果たしている。特に15年かけて作り上げた薬草園は彼の王国である。

そこでは、「目だつもの、目だたないもの、つやつやしたもの、毛のあるものなど、さまざまな葉が複雑な緑の色合いをつくっている。がいしてどの花も小さくて、恥ずかしげにひっそりと咲き、色あいも薄むらさきや淡いブルーややわらかい黄色だ。もともと花は重要ではなく、そのあとで採れる種のほうが大切なのだ。ヘンルーダ、セージ、ローズマリー、シルヴァース、ムラサキ、ジンジャー、ミント、タイム、オダマキ、ハーブ・オブ・グレース、セイバリ、マスタード、それにウイキョウ、ヨモギギク、バジル、イノンド、パセリ、チャービル、マヨラナなど、あらゆるハーブが育っている。」ハーブの中には、かっての放浪で手に入れたシャクヤクとケシなど異国の薬草もあった。

内乱の中で、カドフェルもまたいやおうもなくそれに巻き込まれていくのだが、彼の薬草園はどうなっていったのだろうか。

「香りの王国とでもいうべき朝露の降りた薬草園は、朝日を浴びて、すでに甘ったるい芳香を漂わせ、カドフェルの五感を歓びで満たした。だが、純粋な歓びというものになぜか罪悪感を見い出そうとする修道院の規範は、こうした歓びにも否定的だった。カドフェルの助手として働いている若い修道士のマークは、こうした自分の歓びを罪悪として告白し、贖罪の罰をすすんで受けるべきではないかと、何度も悩んでいたことがあった。彼はまだ若かったから、その良いわけを捜してやるのは難しくなかった。カドフェルはもっと分別があったから、そんな良心の咎めを感じたことはなかった。神の豊かな恵みは人の歓びのためにこそあり、それを素直に受け取らないのは、むしろ非礼に当たると考えていた。」