波津 彬子


波津彬子さんとの出合いは遅く、21世紀になってから。いわゆるマンガ文庫への再録で一気に読んだ。1980年代以降の混沌としたマンガ状況についていけてなかったせいで、とても悔やまれる。
 絵柄は耽美、筋立てはオカルトティックで、そして懐古的なムードが漂っている。代表作で現在も続いている雨柳堂夢咄のシリーズ(朝日ソノラマソノラマコミック文庫)は、明治時代の骨董屋雨柳堂に「よばれてきた」物と精霊と人との不思議な交流の物語である。 基本的には一話完結であるが、大きな物語の筋が織り込まれていて、どこに向かっていくのか予想もつかない。「幽霊宿の主人」も、大名家と異世界の存在との間に生まれた青之介(男前、ただし波津さんの男前はみな同じ顔だちをしている)の文明開化期を舞台とした物語で、忘れさられていく古きものへの哀切な思いがよみとれる。歴史を学ぶものにはたまらない。
 そして波津さんの英国もの・アメリカものも、レトロな質感がとてもいい。とりわけちょっとはづかしいネーミングだが「うるわしの英国シリーズ」は、坂田靖子さんのバジル氏シリーズ以来の名作だ。大英帝国のジャポニズムやシノワズリの雰囲気や、城館に棲む幽霊、イギリス流ユーモアなど、秀逸である。でもきっと主人公のコーネリアス・エヴァディーンもまた、バジル氏と同じく結婚できないと思う。ていうか、結婚させないでほしい。