坂田靖子


 『バジル氏の優雅な生活 1〜』(白泉社、花とゆめコミックス、1980〜)は、ロンドン社交界の華やかな生活と、炭坑やロンドンのスラムの悲惨さが同居していた時代を舞台にした連作。小粋なバジル氏とその召使いのルイ、愛すべきウォールワース議員や絵描きのハリーなど個性的で多彩な友人やレディー、そして悪党どもが織りなす事件で描いた連作。イギリス帝国のユーモアとジェントルマンシップとは何かということがよくわかる名作。その時代の雰囲気のある『パエトーン』(新書館、ペーパームーンコミックス、1984)と『花模様の迷路』(新書館、ペーパームーンコミックス、1986)はイギリス庭園がモチーフの一つになっており、『迷路』のあとがきにガイドがある。『マイルズ卿物語』(新書館、ペーパームーンコミックス、1987年)は、それより前の、殿方がカツラをかぶり異国の少年を側仕えさせることがはやっていた頃のコメディー短編集。
 坂田さんは、短編や連作も多く、多作なので、とこから入るかで印象が変わると思う。私も全部は読んではいない。でも全体としてとても尊敬する作家である。おばけファンタジーとユーモアが楽しいのは、『闇夜の本』(朝日ソノラマ、サンコミックス、1982)/『BEAST TALES』(潮出版社、1990) 『カヤンとクシ』(潮出版社、1987)/『天花粉』(潮出版社、1986)など。傑作集として『探偵ゲーム』(白泉社JETS COMICS、1984)『月と博士』(白泉社JETS COMICS、1986)もある。
 アラン・シリトー原作の『誇り高き戦場』(朝日ソノラマ、1984)はナチと音楽にかかわる話であるが、とてもいい。