無条件に好きとはいい難いが、いつも存在が気になる。山岸凉子さんは昔からそんな人である。彼女は怖い。ホラーや怪談も書いているが、真骨頂は日常のふつうの人の生活の中にある利己主義や狡猾さ、残忍さをえぐりだすところにある。それは心理的な恐ろしさで、人間の生存本能や性欲に連なっているものなので、人ごととは思えない。都市伝説の語り手として評価できるのではないだろうか。一番怖いのは、迷うけど、「天人唐草」かな。似たようなブラックさを感じるのは、一条裕子さん。「すてきな奥さん」(フリースタイル、2003)とか、登場人物の語りが怖い。いやこちらはむしろ芥川龍之介だろうか。
離婚したあと、山岸涼子「ブルー・ロージス」(文春文庫ビジュアル版『ブルー・ロージス』所収、1999)に出会って少し救われた。自信とは愛情だった、という言葉に。
山岸さんは最近また(踊る方の)バレーマンガを書いている。昔の「アラベスク」より絵柄も内容もあっさりとしているが、とてもおもしろい。学校でのいじめやインターネット上の悪意などが描かれている。マンガだけでなく、バレーの世界も変わりつつあるのだということがよくわかる。