日の出に日比浦に着船。そこから海岸ぞいに山を裏へ廻ると、立派な家が百軒ほどあった。山は鉢のような形で景色がよい。時雨れて、南風により浪が山に打ち寄せるのが、すがすがしい。船中の者は皆月代を剃った。ここで、こちという魚を買ったが、7本で600文という安さ。
朝飯後、10時頃から船の者と連れ立ち、9キロほど離れた瑜伽山に参詣した。正午頃到着すると、両側に茶屋が立ち並び、女中たちが呼び込みをしていた。64段の石段を上り、仁王門・石鳥居・銅鳥居・狛犬や塔、絵馬堂などを見物した。鐘楼では誰でも鐘をつくことができる。南の海の彼方には、四国讃岐の丸亀城や讃岐富士が見えて見事。
仁王門の内外に茶店や焼餅・あん餅を売る店が2、3軒あり、二時頃小綿屋清蔵という茶屋で昼飯を食べた。ここには女中が3、4人いて、三味線を持ってきて、30歳くらいの眉を墨で書いた女が、備前なまりながらしゃれて、大坂で流行った「おゆるしよしこの」を歌ってくれた。お銚子3、4に、肴は鯛片身のいり付、羊羹、おつくり、それに飯と鯛の小さな切身と高野豆腐・干瓢・しいたけの平・菜・たけのこの平がついた膳が8人前で、金1歩と銭300文と高かった。夕方、日比に停泊していた船に戻る。湯に入り、夕飯を食べてから出帆したが、西風強く浪が荒くなったので帆を下ろして与島に漕いでいき、一夜をそこであかした。