ようかん

 江戸時代は贈答社会。さまざまなお祝い事の他に、お中元やお歳暮などの季節的贈答、またちょっと訪問するのにお土産など、機会ごとに贈りものをしあう。きちんとその記録もつけていて、武兵衛さんのも残っている。その中でも暑中・寒気見舞いは個人的色彩が強く、武兵衛さんの場合大好きなお菓子をよくもらっている。
 そして武兵衛さんがもらった菓子では羊羹が一番多くて、練り、小倉など種類も多い。九州旅行中に鹿島で知人の呉服商人からもらった羊羹は手製で黒砂糖製で、武兵衛さんはお返しに「万歳飴」をあげている。

奈良香寿軒のゆりねようかん

 羊羹は、もともと中国で羊の肉を使った熱い汁物のことで、魚肉食を禁じた禅宗寺院では小豆や米・小麦などを使って羊肉に見立て、これを味噌を使った汁に浮かべる「点心」を作っていた。これが室町後期に茶の湯の菓子として汁なしの、小豆に葛や砂糖を加えて蒸した甘い菓子に変化した。この羊羹は現在では「でつち羊羹」といわれるもの。16世紀には天皇や公家の日記に折りや籠に入れて贈答に使われたことが記されている。寒天を使った煉羊羹が登場したのは19世紀初頭前後といわれているが、京都では岡本善左衛門が万治元年(1658)に完成したという説もある。