雪の氷

 「不思義の控」で、武兵衛さんは加賀金沢に旅行したとき、夏の芝居見物で「雪の氷」という「軽石の如き」一つ5文の菓子を賞翫したと書いている。これは夜店でも売られており、宿でも鉢にたくさん出して白砂糖をかけて食べたそうだ。白山から来ると聞いており、食べると「誠口中ひへ寒中の雪ニちがハす候」とあるので、おそらく氷系だと思われる。削っていないもろい氷かな。そこで不思議に思ったのは、かき氷の起源。製氷ができるようにならないとだめだから、江戸時代にはなかったと思われるが、金沢だと天然の氷が夏でも楽しめたということだろうか。
 そこで大坂では夏どのような冷たいものがあったのか。調べると、意外なところで武兵衛さんの流行歌の書留に、「夏のうりごへ」というのがあって、

夏のうりごへ さまざまあれど かふり水や ひやつこひ かさやすげがさ よしすだれ 金魚金魚めだかヤ ところてん ござやもしごさ 花ござやと いきな男の はんてん姿 いつもはやりの こんかずり もよぎのかヤやかやかや

 夏の行商の声を取り入れた素敵な歌だが、ここにでてくる「かふり水や ひやつこひ」というのが、氷水を売り歩いていた声らしい。今も飲み水は買う私ですが、昔も冷たい水というのはごちそうだったのだな。

「摂津名所図会」より、水売

「浪花十二月画譜」よりさとう水売