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ウェッジウット
 イギリスの食器メーカーとして有名なウェッジウッド。この間、友人から紅茶のサーバーをもらって以来、ちょっとカップにこっている私だが、悲しいことに庶民なので、せいぜい買い物に行くのは大阪梅田のデパート程度。そして大阪梅田のデパート三つのすべての洋食器コーナーの片隅にはウェッジウッドの店がある。高級そうなイメージだが、カップ一個が数万もするドイツのマイセンなんかと較べると、ぐっと庶民的なお値段だと思ってしまう。この間、藍地にクリーム色で猿と兎が描かれたカップを買って、愛用している。
 『デザインの国イギリス』という本によると、ウェッジウッドの創始者であるジョサイア・ウェッジウッド(1730〜95)氏は、たいした人物だったようだ。彼以前には、イギリスの製陶は農民の副業程度で高級品は大陸から輸入していたのを、日常食器を大量生産する体制を一代で作り上げた。技術者としても旋盤の導入や釉薬の開発、高温度計の改良など多くの業績があるが、それは彼の「コンセプト」のために使われた。すなわち、彼は庶民にデザインと機能性に優れた日常食器を安価に供給することをめざしたのである。たとえば今では当たり前だが、均一なものを大量生産するために単純なフォーム(成型)を考案しており、それは今に至るまで変わっていないという。ウェッジウッドは工業デザインの美を追究して成功した「最大の産業的天才」の一人なのである。
 また彼は企業家としても先進的だった。代理店制度や製品を並べるショールームや商品カタログは彼の考案によるということである。セールスマンがカタログを持って客を訪問し、商品の予約販売をするーこうした今では当たり前の商行為も、ウェッジウッドから始まった。 大衆品として始まったウェッジウッドが今なぜ高級品なのか。その後産業革命が進展して大量生産品はより粗悪で安っぽいものに変わり、生活の中のスタイルにこだわったウェッジウッドの精神はいつのまにか貴族的なものになってしまった。庶民には美はいらない、ということである。
 親愛なるジョサイア・ウェッジウッド。私は庶民ですが、あなたの精神に立ち帰り、毎日のささやかな紅茶やコーヒーをあなたの優美で軽いカップで飲みたいと思う。生活の中に美という安らぎを求めて。1999.09 


ウェッジウッド「九谷クライン」のデザイン

ウェッジウッドによる九谷の壺のシリーズで、これはプレートのデザイン。本物の九谷焼よりははるかにおとなしい色合いだが、模様はくじゃく・ぼたんと華やか。リッツ・カールトンホテルでお茶して出会い、一目惚れした。その頃日本では売られていなかったので、直輸入したちょっと自慢の品。最近は時々お店でもみる。